貞明皇后の生涯 工藤美代子

国母の気品―貞明皇后の生涯 工藤美代子著 清流出版 (2008/07)

十五歳でのちの大正天皇と御成婚。四人の皇子の母となり、
病気がちの大正天皇を支えて激動の時代を生き抜いた。その波瀾の人生を豊富な資料と丁寧な取材で描ききる。

目次
第1章 利発な姫君(幻の伝記/ 九条家の謎/ 幼児体験/ トレビアン/ ご婚約内定/ 破談のドミノ/
皇太子の立場/ 長い長い一日)/
第2章 聡明な皇后(新婚の日々/ 親王御降誕/ 皇室の伝統/皇太子妃という仮装/ 結婚十年後の病/
明治天皇崩御/ ある噂/ 裕仁親王妃内定/ 宮中某重大事件/ 皇太子の外遊/ 遠眼鏡事件/ 質素の範/
大地震発生/ 未曾有の大祝典/ 皇后の役割/ 九条武子夫人/ 秩父宮のお妃選び)/
第3章 国民のおばばさま(天皇の病勢報道/ 皇太后になった瞬間/ 皇太后の熱意/ 嫁教育/
銀のボンボニェール/ 第三皇子の結婚/ 皇子単行/ 皇太后と皇后/ 皇室外交の先駆者/ 母として/
戦勝ムード/ 防空壕での暮らし/ 両陛下との話し合い/ 悲母観音の相/ 皇太后の覚悟/ 六十七年の生涯)


「外交官とはなにも語学が堪能で高学歴であることが条件ではない。
むしろ相手の懐に飛び込むような思いやりや優しさを備えた人が優秀な仕事を残す」

あとがき
「貞明皇后の志操は、香淳皇后、そして美智子皇后へと受け継がれていった。
しかしこの先ははたしてどうだろうか。
自分の実家の価値観しか持たず、
すべてにおいて自己の欲望ばかりを優先させるような皇后が誕生したら
国民は尊崇の念を失い、天皇制度の存続もあやういものとなるだろう」


工藤美代子氏

  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

週刊文春2013年5月16日号
工藤美代子(ノンフィクション作家)
オランダが“安心できる場所”だった
今回のオランダご訪問で印象的だったのは、雅子さまが大変ご機嫌麗しかったこと。
現地の空港では、わざわざ皇太子を呼び止められてプレスに向かって手を振られる場面がありました。
雅子さまは報道陣やカメラが苦手だそうですので、国内でそのようなお姿を拝見する機会はありません。
即位式に出席されたことも、多くの国民に感動を与えたことでしょう。
これまでは皇太子お一人での出席が多かっただけに、雅子さまの笑顔を見守る
皇太子のご表情も心なしかいつもより明るかったようにお見受けしました。
ただ、残念ながらすべて手放しで喜ぶわけにはいきません。
これを機に雅子さまのご病状が良くなると楽観視することもできないからです。
ご訪問先となったオランダは、皇太子ご夫妻と非常に縁のある場所です。
新たに即位されたウィレム・アレキサンダー国王は、皇太子と同世代の四十六歳。
しかも、「水の研究」という共通のテーマをお持ちです。
2005年にアレキサンダー皇太子とマキシマ妃が来日した際には、ご夫妻で応対なさっています。
その後、皇太子ご一家がオランダの地でご静養なさったことは、ご承知の通りです。
久々の海外ご公務先には、顔馴染みの王族がいるオランダを選ばれたということなのでしょう。
ご夫妻にとって、オランダは安心できる場所だったのです。
雅子さまは、国立博物館での晩餐会にはご欠席されたと聞き及んでおります。
一方、ご夫妻でご面会に臨まれたのは、オランダ在住の雅子さまのご両親と、以前からお知り合いだった方のみ。
通例ですと、皇族の訪問先では在留邦人との懇談が行われますが、こちらには皇太子が一人で出向かれたようです。
そこで思い出されるのが、今から十五年ほど前、まだ雅子さまがご療養に入る前のことですが、
私が少人数のパーティに出席した際の出来事です。皇太子ご夫妻がいらっしゃり、
出席者一人ひとりにお声がけをなさっていました。
ところが、たまたま私の隣に大きな声で話している男性がいて、
その方に気付いたご夫妻は、お互いに目で合図を送っていました。
そして、ついにこちらの方へはいらっしゃらなかったのです。
たしかにデリカシーに欠ける印象の男性ではありましたが、皇太子ご夫妻はやはり公平でなければなりません。
当時からお付き合いなさる王族も、ご面会なさる方も“安心できる相手”を選ばれているのでしょう。
ただ、もちろん中には変わった方がいるとしても、本来はそれも含めてのご公務です。
たとえば、被災地を訪れるときに、あらかじめ人選をすることなどできません。
即位式という晴れ舞台に立ち会われたことは、雅子さまにとって充実した時間であったと
拝察します。オランダ王室で世代交代があったように、日本でもいずれ新しい御代がやってくるのでしょう。
「またこういう場に立ちたい」という雅子さまの思いが、
新たな治療に入られるキッカケとなることを願ってやみません。

  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

悪童殿下 怒って愛して闘って 寛仁親王の波乱万丈
工藤美代子著 幻冬舎 (2013/5/31)

「皇室へ娘を嫁がせるということ」
しかし、娘を皇室に輿入れさせたご両親は、それですべてが終わり、
一族の名声が高まったという満足感に浸るよりも、皇室の長い歴史に思いをいたして、
娘や孫の将来のためにも、適切な対応をしていただきたいと思うのである。
高齢になっても役職にしがみついて、自己の栄達をはかることばかり考えている間に、
真剣に娘の病状と向き合ってほしいと切に願う。

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