元気に笑った雅子さま

諸君!2008年7月号平成皇室二十年の光と影
「われらの天皇家、かくあれかし」 より
元気に笑った雅子さま 藤城清治 (影絵作家)

…美智子さまが皇太子妃時代から、ぼくの影絵が連載されている『暮しの手帖』を愛読されていて、
ぼくの影絵の一枚が特にお気に入りになり、その原画を献上した。「つり橋はぼくのハープ」という絵で、
橋は心と心、人と人、世界をつなぎ、吊り糸はハープのように奏でられ、男の子と女の子が手をつなぐという、
シンプルでぼくが一番気に入っている絵だった。この影絵が美智子さまのお気にも召したことで、
ふしぎな絆で結ばれたように思えてうれしかった。
皇后陛下になられてから、影絵の話を聞かせてほしいとのことで皇居へお伺いしたこともある。
アジアの影絵芝居や、賢治の「銀河鉄道の夜」やバートンの「ちいさいおうち」などの影絵劇の話をしたら、
「銀河鉄道の夜」は奥が深く、一回読んだだけではわからないし劇も大変でしょうと解釈も的確で、
日本や世界の童話にもお詳しいのに驚いた。
また、影絵のテクニックを質問されたり、動物の話になったり、「つり橋はぼくのハープ」の前で
チェロを弾かれているとか、いろいろお話がはずんで、一時間を超してしまった。
途中、二度女官の方が小さな紙を渡しにこられたから、きっと予定の時間を超過していたのだろう。
皇后さまの影響か、紀宮さまもご結婚前に「ラーマーヤナ」の影絵劇など何回か観においでになった。
また秋篠宮妃の紀子さまも学生時代から影絵がお好きで、妃殿下になられてからもお子さまとご一緒に
おいでになったりした。
皇太子妃の雅子さまも、ご実家がぼくの家と目黒区洗足の同じ町会で、ご結婚前は、犬を連れて
よくうちの前を散歩されたらしい。
影絵展にも何度もおいでになられたが、愛子さまがお生まれになって、はじめての外出のとき、
最初に美しいものをみせたいと銀座の教文館の影絵展におみえになった。
光に映し出される影絵がふしぎなのか、愛子さまは抱かれたまま手をのばされる。
アクリルでカバーしてあると申し上げると、うれしそうに、さわったり、たたいたりされた。
雅子さまは一時間近く、ほとんど愛子さまを抱かれたままでご鑑賞になられた。
また、東宮御所へ影絵を十数点運び込んで御所で影絵展をひらいたこともある。
最近では、去年の秋、愛子さまが風邪ぎみで、雅子さまひとりでおいでになった。
ちょうど、ぼくの愛猫のエジプシャン・マウのアラメが亡くなった直後で、アラメをご存知の雅子さまは
「天国のアラメ」の影絵の前で、寂しいでしょうと慰めてくださった。
また、動物愛護団体の日本クマネットワークの依頼で制作した「森へ入る時は鈴をならそう」の絵では、
クマが絶滅に瀕することに心配されたり、クマやリスの表情に喜ばれたり、ほんとに動物好きの雅子さまらしく、
皇居の森にもタヌキやいろんな動物が結構いるんですよ、といわれたりした。
その頃、バッシングのはげしかった朝青龍を描いた「それでもぼくは朝青龍に愛をおくる」の前では、
「国技や伝統だけにとらわれないで、もっと新しい風として外国から来て、横綱にまでなった力の源泉を
温かく見守ろう」というぼくのメッセージをお読みになって、お相撲がお好きなんですね。
愛子も好きなんですよといわれた。
帰り際、ぼくの略歴の昭和40年の、幼稚園児の皇太子殿下が馬に乗られたという欄を指さされて、
笑われながらお帰りになったけれど、とてもご病気とは思えないほどお元気に見えた。 …

トップページ(目次)へ