田中卓


特集ワイド:「待ったなし」女性宮家論議 「愛子さまを皇太子に」 
皇学館大名誉教授・田中卓さん
毎日新聞 2014年06月24日 東京夕刊

高円宮家の次女典子さま(25)のご婚約が発表され、慶事に沸いた直後、桂宮さまが逝去された皇室。
これまで22人で構成されていたが、秋には20人となり、当面増える見込みはない。
皇室はどうなっていくのか。止まったままの女性宮家論議はどうすべきなのか。
皇学館大学名誉教授、田中卓(たかし)さん(90)を訪ねた。【田村彰子】

昨年、遷宮で話題になった伊勢神宮のそばに皇学館大学はある。全国各地の宮司を輩出する神道の名門。
学長を務めた田中さんは今、伊勢神宮内宮のそばで研究を続ける。
安倍晋三首相の祖父、岸信介元首相は、皇学館大の総長を務めていた。
田中さんは総長付として、岸元首相を支えて働いたことがある。
「『戦前の皇室の姿を取り戻すべきだ』と考えていた岸さんとは違い、
安倍さんは皇室の問題に特別な信念があるようには思えません。
今も頭の中は集団的自衛権のことでいっぱいでしょう。
しかし皇位継承問題、女性宮家創設問題は一刻の猶予もない」。
少し不自由な体を重そうにイスに委ねつつ、たくさんの資料を手元に並べ力を込めた。

専門は古代史。神武天皇が実在したとの説に立ち、
日本の歴史は万世一系の天皇を中心として展開されてきたとする「皇国史観」を掲げる。
ならば当然「男性・男系の天皇を」と主張しているかと思えば、
なんと「女性・女系で問題ない」と言い切る。
昨年末には「愛子さまが将来の天皇陛下ではいけませんか 女性皇太子の誕生」を出版した。

そもそも「男系」継承とは、男子が嫁をとり、その子に「家」を継がせること。
対して「女系」継承は、女性が婿をとりその子に「家」を引き継ぐ。
現行の皇室典範は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定め、
男系でかつ男性しか即位できない。今後もし国会の多数決で典範が改正され、
愛子さまが即位すれば「男系の女性天皇」、愛子さまの子が即位すれば「女系の天皇」となる。
過去「男系の女性天皇」は10代8人存在したが、「女系の天皇」はいない。
天皇家を支える宮家も実質的に男系継承に限定されており、
未婚の男性がいない、秋篠宮家以外の三つの宮家はいずれなくなる。
女性宮家創設問題は、男系にこだわる安倍内閣になってから停止したままだ。

田中さんは「女性宮家の問題は城でいうと石垣の部分。
まず、皇位継承の問題をきちんと議論しなくてはならない」と繰り返す。
現在の皇太子さまが即位されると同時に、次の皇太子が問題になる。
「皇位継承問題だとまだ時間があると思われるかもしれないが、
立太子の問題はそう遠い未来ではない」と指摘。
「なるべく直系のお子様が皇位を継承されるのがいい。
天皇家の系譜を見てもまずは直系に継承するように努力し、どうしても難しい場合に傍系へ継承した。
皇太子殿下の後には、愛子さまが皇太子になられるのが当然の流れ」と主張する。

そもそも古代史を研究した田中さんには「男系男子が皇位を継ぐことが日本の伝統であり誇り」
という考えに違和感がある。「日本の『伝統』で世界に誇りうるものは、
建国以来ひとつの『皇家』の系列で皇位が継承されてきたことです。
外国からの征服者や他の氏族に皇位を奪われることがなかった点が重要です。
『男性・男系』が続いたことではありません」と言い切る。
「神話と言われるかもしれませんが、皇室の祖先とされ、
伊勢神宮にまつられている天照大神(あまてらすおおみかみ)は女神です。
もし古代から男性中心なら、おそらく天照大神は男神だったでしょう。
だが、卑弥呼も女性とされ、古代祭祀(さいし)では女性の方が神に近いとされていた。
日本古来の伝統は必ずしも『男性・男系による皇位の継承』ではないでしょう」と言う。

さらに男性・男系を続けていきたくても「側室制度がない現在ではいずれ無理が生ずるはず」と指摘する。
近世では、江戸時代初期の後光明天皇から大正天皇まで
14代にわたって側室から生まれた皇子が皇位についた
。田中さんによると、神武天皇までさかのぼっても約50%が側室から生まれている。
「男性・男系」を守るため方策として挙げられるのが「旧皇族の復帰」だが、やはり同様の問題にぶつかる。
「現在旧皇族と言われる方々の源流である伏見宮家、有栖川(ありすがわの)宮(みや)家、
閑院(かんいんの)宮(みや)家、桂宮家をみても、正室の子による継承が15例、
その他の側室の子や養子が36例にもなります。つまり、旧宮家の方に復帰していただいても、
側室制度がない以上、いずれ男性・男系での継承が難しくなる時期が来てもおかしくない」

さらに、男性・男系のみの継承へのこだわりが、いかに天皇家にストレスを与えるかを、田中さんは危惧する。
「愛子さまはご自身がいらっしゃるのに、悠仁さまが『後継ぎ』といわれることについて
どのようなお気持ちでごらんになるでしょうか。
また、悠仁さまに嫁がれる方のプレッシャーはいかほどのものか、想像を絶します。
そもそも皇室に嫁ぐ方がいなくなってもおかしくない。
現皇太子妃のご病状にしても女性・女系の継承が公認されていれば、
違ったものになったのではと拝察します」。
確かに一般国民には想像しがたいストレスがあるのは間違いない。

「愛子さまが皇太子となれるようにし、女性宮家の設立も容認するように典範を改正する。
ここまでは私が生きているうちに何とか実現していただきたい」。田中さんはそう力を込める。
「男性・男系」派は「愛子さまの即位を認めれば、いずれその子が即位し、
女系の天皇が初めて誕生してしまう」と主張する。
この点について尋ねると、田中さんは、少し間を置いてから静かに話し出した。
「昭和天皇は、側室の廃止を昭和の初期に決められた。
しかし、その後お生まれになったのは女のお子さまばかり。
周囲は『何とか側室を』と話し合いましたが昭和天皇は認めず、そのうちに今の陛下が誕生された。
戦後は誰も『側室制度の復活を』とは本気で言わないし、現実的でもありません。
時代とはそういうものだと思います。
とにかく、愛子さまと現在の未婚の女性皇族方が皇室に残られるようにできれば、
あとは時代に合った皇室に変化されるのではないでしょうか」。
「女系」「男系」で争うことは無意味だと田中さんはつぶやいた。
「私が守りたいのは万世一系の国体です。そこに男女の違いはありません」

女性皇族がお年ごろなだけに、喫緊の課題ではないか。

http://mainichi.jp/shimen/news/20140624dde012040004000c.html

犬塚博英のブログ 2014年6月14日
愛子さまを天皇に?
 昨年末、女系女性天皇論者の大御所にして「国史の泰斗」とかいう田中卓氏(元皇学館大学学長)が
『愛子さまが将来の天皇陛下ではいけませんか――女性皇太子の誕生』(幻冬舎)という新書を出版した。
一読し唖然とするばかり、「老先生、それはなりません」。

曰く「『次代の皇太子』不在が日々切迫。開かれかけた『女性皇太子・天皇への道』が
〈男系男子絶対固執派〉のゴリ押しによって閉ざされた。皇室の祖神である天照大神は女性。
〈男系固執派〉が女性天皇を否定するのは、
明治以来の皇室典範に底流する男尊女卑思想。
直系・父子継承の伝統、徳仁天皇(現皇太子)系を差し置いて傍系天皇(男子)に移るのは無理がある。
現典範第一条の皇位継承権者は『男系男子』を『子孫』に改正するだけで事足りる。
東京オリンピックの年に18歳になられる愛子様の立太子を準備すべし」――。

余りに衝撃的な(?)提案ゆえか、ご本人の「学者生命をかけた戦い」との決意も空しいほど反響は乏しい。
論壇では全く問題にされず、田中門下の学者神道人も音なしの構え。
老先生、晩節を汚したなというのが神社界の総意のようだ。
沈黙、無視はご老体には堪えるだろう。

http://inuzukahirohide.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/index.html

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