天野篤氏単独インタビュー

2015.3.8 06:00更新
【皇室ウイークリー番外編】
「もう手術したことを忘れていただいていい」陛下心臓ご手術の執刀医・天野篤氏単独インタビュー詳報
天皇陛下が心臓手術を受けられてから、2月18日で3年を迎えた。
産経新聞の単独インタビューに応じた執刀医の一人で、
順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤副院長(59)は、
陛下から現代医療への厚い信頼を感じたことを明らかにし、
陛下ご自身が健康管理に高い意識を持たれているエピソードも披露した。
4月に控えるパラオ共和国ご訪問には「問題ない」との見解を示した。インタビューの詳報をお届けする。

−−陛下の現在のご健康状態をどう見ていますか

天野氏「(平成25年11〜12月の)両陛下のインドご訪問はハードスケジュールだったと聞いた。
私も先日、インドに出張したが、道路がものすごく悪い。
80歳の方があの日程であの道路で移動してというのは、お元気でなかったらまず無理だろうと思います。
手術で心臓の負担が取れ、リハビリもいい、ということを手応えとして感じていただいていると思います」

−−陛下が日常生活を取り戻されたと感じたのは

天野氏「天皇誕生日のときにご自身がおっしゃっていましたけれど、
狭心症の症状は和船をこいでるときに出たんですよね。
(手術後に、御用邸のある)葉山で確かめたくてこいでみたら、全然大丈夫でした、というお話でした。
健康に関する知的好奇心がまた動くぐらいに回復されたということではないですか。
パラオに行かれることも、両陛下からうかがいました」

−−パラオご訪問は1泊2日の強行日程になりますが

天野氏「皇后さまの方が手術で治す病気ではないから波があるかもしれませんけれども、
陛下は少なくとも問題ないと思います」

《注・皇后さまは頸椎症性神経根症のため肩や腕の痛みを訴えられることがある》

−−24年5月の英国ご訪問や、インドご訪問の直前に相談はありましたか

天野氏「ご訪英の2週間ぐらい前に、手術に関わった人たちが集まってデータを検討し、
大丈夫、という確認を取ったぐらい」

−−24年2月という手術日程は、術後経過に一番いい時期を選んだ形ですが

天野氏「ご訪英時期との引き算ですからね。私もちょうどあの時、心臓血管外科のセミナーがあり、
スケジュールを空けてあった。それをキャンセルして手術に専念できた。
陛下がいつも腐心されている、周りに迷惑をかけたくない、
というのがまさにピンポイントであったという感じでした」

天野氏「いろいろな流れがあるんですよ。左心耳(さしんじ)の処置についても先日、
抗凝固剤での投薬治療と左心耳の処置とを比較するトライアルがあり、
左心耳を処置した方が脳梗塞の発生が40%低いというデータが出て、それも(両陛下に)報告した。
皇后さまがとても喜ばれていた。われわれがあの治療を初めてちょうど1年目ぐらいで
手応えを感じていた時期でもあった」

《注・左心耳とは左心房にある耳形の突起で、血栓が生じやすい部位。天野氏ら執刀チームは手術中、
陛下の心臓に不整脈が起きたことから、血栓が飛んで脳梗塞となるのを予防するため、
左心耳の根元を糸で縛る処置を行っていた》

−−定例検査の結果は

天野氏「悪くなければ何も連絡はきません。今のところはない」

−−陛下は年1回ほど海外を訪問されていますが

天野氏「問題ないんじゃないですかね。その都度、行って戻っての手応えで、
次をどうするかとご自身で決められているはず。
英国が大丈夫だったからインド、インドが大丈夫だったからパラオというように」

−−80歳の方でそれほど自覚を持って行動されているというのは

天野氏「80歳過ぎてからゴルフを始める人もいます。
陛下は、夏のテニスなんかが一つの指標ではないですか」

−−陛下は新嘗祭(にいなめさい)のように夜にもお出ましがある。どの程度、控えられるべきでしょうか

天野氏「あまり控えなくていいのではないですか。屋外のほかは、かなり管理された環境でやられる。
術後3年ぐらいで、同年代の人と比べて制限されることは何もないと思います」

−−陛下の80歳のお誕生日前のインタビューで、
天野氏は「何もなければ10年ぐらいは大丈夫」と言っていた。その考えは変わらないですか

天野氏「変わらないですね。(陛下も)今は(胸の)痛みも全然ないとおっしゃっていた。
手術をしたことを一般の人が忘れ出すのが2、3年目。
(陛下も)忘れていただいた方がいいのではないですか。
皇后さまもそうですが、現代医学への信頼がとても厚いので、
これから何か起きたとしても非常に前向きに受け止められると思います」

−−陛下が健康管理で気を付けられていることは

「皇居では、決まった時間に散策されているのではないですか。
個人的な推測ですが、悠仁さまをすごくかわいがっていらっしゃるから、
もう少しお相手をされたいと思っているのではないですか。
御所の応接間の前にあるケヤキにカブトムシが集まってきて、
それを(悠仁さまが)取りに来られるんだとおっしゃっていました」

−−一般の80歳と比べて、陛下の方が体力がおありなのでしょうか

「ものすごく頑健というわけではないと思います。でも内臓の面からすると、十分管理されている。
だから突発的なことが起こる不安は、一般の人よりは少ないのではないですか」

−−陛下はお酒もたばこもたしなまれない

「三大生活習慣病の脳卒中、がん、心臓病。心臓は治療済み。
がんは前立腺の手術をされているから腫瘍マーカーを定期的にチェックしている。
脳卒中に関しては、心臓が原因の脳梗塞がだいたい4割。
それはもう(左心耳の)手術をされているから起こらない。
一般の人に比べれば、三大生活習慣病は相当厳重に管理された状態で過ごされているわけで、
ご健康に関しては、大きなけがなどさえ防いでおけばまず問題ないんじゃないかと思います」

−−風邪も高齢者にとっては油断できない

「インフルエンザになれば肺炎になりやすい。でも高齢者のいわゆる筋力低下で弱っていき、
免疫力が落ちていってという状況は全然感じられないです」

−−手術時のご体力は

「体力はそんなにおありではなかったですね。
直前の11月のマイコプラズマ(による気管支炎)の影響があった。
だから、東大のチームは体力的に問題ないかと随分気にしていました」

−−ご体力がないと、手術をするという判断はできないのでしょうか

「お食事に関しては、一番どん底からちょっと上向きだったのが、いけると判断した大きな理由です」

−−現代医療への信頼が厚いというのは、陛下が科学者でいらっしゃるからですか

天野氏「それだけじゃないですね。国民の代表(である医師団)が
英知を絞っていることに対する感謝というんですかね。
医師団だけではなく、日本全体が自分の健康を気にしてくれていると、
それに応えなければという感じですよね」

−−陛下からそのようなご発言は

「小学校の時に盲腸、さらに前立腺がんの手術を受けており、
健康を取り戻すために必要な治療に出会ったというようなことをおっしゃっている。非常に潔い。
前向きに、あるがままの状態で健康問題に全力で応えるというか、治療、医師団、現代医学に対し、
しっかりと身をもって応えるという。国民、同年代の人にとってどれだけ心強いか。
象徴天皇としてのスタンス、矜恃みたいなものは絶対に崩されない。そのように私は捉えています」

−−昭和時代には、天皇の体(玉体)にメスを入れることへの議論もありましたが

「昭和天皇が健康問題をどう捉えていたかを、東大の医師団もあまり踏み込んでない。
今回は結構、踏み込んでいるわけです。なぜかというと、陛下ご自身が、
健康を害することは国民に迷惑かけるという意識がおありだから。
象徴天皇としての振る舞いという確固たる概念、
これからの天皇のあり方の模範を示す覚悟がおありなのではないですか。
だから目の前のことにすべてフラットに対応する姿勢を崩されない。
手術期間の2〜3週間ぐらいの経験は、私の人生の中でも、代えがたいものです」

「まとめると、陛下ご自身の健康管理に関しては、まず外国ご訪問による手応え。
あと軽井沢でのテニス、葉山での和船が、ご自身のバロメーターになっておられると思います」

http://www.sankei.com/life/news/150308/lif1503080002-n1.html

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