皇太子ご夫妻、トンガご訪問同行記

2015.7.20 06:00更新
【皇室ウイークリー】
(番外編)皇太子ご夫妻、トンガご訪問同行記 雅子さまの「自信」と「充実」の5日間を振り返る
日本から約8000キロ離れた南太平洋の島国、トンガ王国。
皇太子妃雅子さまが7月2〜6日、皇太子さまとともに、2年ぶりの海外公式訪問を果たされた。
国王ツポウ6世の戴冠(たいかん)式に参列して王室との交流を深め、
予定外だった日系人との懇談の場では流暢(りゅうちょう)な英語を披露するなど終始笑顔を浮かべられていた。
トンガ側の手厚いもてなしにも支えられ、「一段と自信をつけられた」(宮内庁関係者)
充実の5日間を同行記者の目で振り返る。(伊藤真呂武)

笑顔の雅子さま
羽田空港からチャーター機で約10時間、現地時間3日午前9時半ごろ、
皇太子ご夫妻はトンガタプ島のファアモツ国際空港に降り立たれた。
ウルカララ皇太子、ポヒバ首相らの出迎えを受け、長時間のフライトの疲れを見せずに笑顔で握手を交わされた。
雅子さまは、王族のミカエラちゃん(4)から歓迎の花束を手渡され、腰をかがめて受け取られた。
空港のデッキでは在留邦人らが日の丸を振り、「ようこそ」の言葉が投げかけられる。
声に気づいたご夫妻も手を振り返された。
ご夫妻は空港内の貴賓室で、ウルカララ皇太子、ポヒバ首相とご懇談。
車寄せには、クラシックな米キャデラック製のリムジンが待ち構えていた。
日本の外務省関係者によると、王室がご夫妻のために用意したもので、各国の賓客との待遇の違いを象徴していた。
他の賓客の車の大半に中国国旗が入っていたが、JICA(国際協力機構)関係者によると、
戴冠式直前に中国の支援で大量に導入されたとのこと。遠く離れた南国で、
中国の世界戦略の一端を垣間見るとは思わなかった。
ちなみに、日本の報道陣がレンタルしたバスは、日本の旅行会社の中古車だった。
島南東部の空港から首都ヌクアロファまでは車で約30分。
沿道にある民家の生け垣などはトンガ国旗や国旗の色にちなんだ白と赤の布で彩られ、
至る所に国王夫妻の写真が掲げられるなど、島全体が祝賀ムードに包まれている。
この日夜には、ウルカララ皇太子主催の歓迎夕食会が開かれ、皇太子さまがご臨席。
雅子さまは翌日の戴冠式に向けて体調を整えるため、
沼田行雄・駐トンガ大使から式典の説明を受けた以外は宿泊先のホテルで静かに過ごされた。

戴冠式では家族としておもてなし
4日、ヌクアロファのフリーウェズリアン・センテナリー教会で戴冠式が行われた。
敬虔(けいけん)なキリスト教徒が多いトンガ国民の心のよりどころでもある。
参列者は約1100人に上ったが、欧州、アジアの王族がほとんど参列していないこともあり、
華やかさよりも、アットホームな雰囲気が漂う。
皇太子ご夫妻はパトカーに先導され、リムジンに乗って教会にご到着。
皇太子さまはモーニングにシルクハット、雅子さまはベージュのロングドレスに
それぞれ日本とトンガの勲章を身につけられていた。
トンガの勲章は、皇太子さまには2008(平成20)年に先代国王のツポウ5世の戴冠式に参列された際、
最高位の王冠勲章一等勲爵士が贈られている。
雅子さまには今回の訪問でサロテ3世王女章大十字章が授与され、3日夜に宿泊先に届けられたという。
参列者の大半が国王の玉座と向かい合う席に着いたが、ご夫妻には玉座の両脇の王族と同じ席が用意された。
しかも、国王の姉、ピロレブ王女と並ぶ最前列だった。
この待遇は滞在中、一貫しており、家族としてもてなそうという王室側の気配りが感じられた。
ガウンをまとった国王が入場して式典が開始。
聖歌隊による賛美歌が流れ、国王につえと指輪、王冠が授けられると、
ご夫妻は他の参列者とともに拍手で祝福された。
国王に続いて教会を立ち去られる際には、ご夫妻にも拍手が送られた。
王宮に場所を移しての昼食会。随行した側近によると、ご夫妻は王宮内の王族と同じ部屋で開始時間を待ち、
交流を持たれた。国王夫妻の部屋に招かれ、記念撮影に応じられる機会もあったという。
昼食会のメニューは、大根サラダやニンジンの冷製スープ、和牛のフィレステーキなど。
こんなところにもご夫妻への配慮がちらほら。
ご夫妻は隣に座ったウルカララ皇太子やピロレブ王女と歓談しながら食事を楽しまれた。

在留邦人らと懇談会には雅子さまがサプライズご出席
祝賀の食事会は4日夜と5日昼にも続いた。
5日、ヌクアロファ郊外の広大な敷地にツポウ5世が別荘として建てた離宮では、
国王の娘、アンジェリカ王女主催の昼食会が開かれた。
皇太子さまお一人で臨み、国王夫妻に別れのあいさつをされたという。
王女自ら準備を取り仕切る場面もあり、盛大なホームパーティーのおもむき。
この日のメニューにも、刺し身や太巻きなど日本風のものが目立った。
会場近くでは、トンガ名物の子豚の丸焼きが次々と焼かれ、テーブルに並べられた。
昼食会から数時間後、皇太子さまと在留邦人、日系人、在日トンガ人との懇談会場である
在トンガ日本大使館に向かう直前、宮内庁側から雅子さまも参加されることが伝えられる。
報道陣にとっては、うれしい誤算だった。
懇談の場では、在留邦人に続いて、沼田大使から日系人2人が日本語が得意でないことが伝えられると、
ご夫妻はともに英語に切り替えて質問された。
特に、雅子さまは流暢な語り口で「日本には何回行ったことがありますか」などと積極的に話しかけられた。
雅子さまが英語が得意であることは周知の事実で、お住まいの東宮御所では外国大使と懇談することもあるが、
取材の機会がないので、長年、宮内庁を担当している通信社の記者でさえも
雅子さまの英語を聞いたのは初めてだったという。
何よりうれしかったのは、懇談相手たちだろう。大東文化大にラグビー留学し、
トンガ旋風を巻き起こしたシナリ・ラトゥさん(49)は戴冠式に参列するため一時帰国し、
懇談に加わった。終了後、取材に「お元気そうで良かった」とほおを緩めた。
ただ、これまで大活躍だったリムジンの冷房装置が故障し、急遽(きゅうきょ)、
大使の車に乗り換えられるというハプニングもあった。
「自信を深められたことは間違いない」
トンガを離れる際、雅子さまがファアモツ空港に見送りにきたウルカララ皇太子夫妻と別れを惜しむように
何度もあいさつをかわされていたのも、充実した訪問だったことの証だろう。
側近らは長期療養中であることを踏まえ、「過剰な期待は逆効果」という従来の姿勢を崩さないが、
宮内庁関係者は「昨年ごろから重要な公務に立て続けに出られるようになったのに加え、
トンガ訪問を無事に終えたことで自信を深められたことは間違いない」と前向きに受け止める。
ご夫妻が帰国後に文書で出された感想には、トンガ側のもてなしへの感謝の言葉がつづられていた。
「国王王妃両陛下を始めとする王室の皆様方、ポヒヴァ首相を始めとする政府関係者の方々に、
心のこもったおもてなしをいただいたことに深く感謝しております」
「ウルカララ皇太子同妃両殿下には、空港にお出迎え、お見送りいただくなど、温かいお心遣いをいただき、
戴冠式昼食会の席上などで親しくお話しすることができ、大変うれしく思いました」
「こうした中でトンガ王室やトンガ国民の皆様に温かく迎えていただいたことを心からありがたく思いました」
感想の文書はこう締めくくられている。
「私たちも、両国の親善、友好のために少しでもお役に立てれば幸いです」


http://www.sankei.com/life/news/150720/lif1507200007-n1.html

目次2へ