倉山満氏

眞子様の御婚約「女性宮家を創設して皇族を増やそう」が間違っているわけ
【憲政史家・倉山満】
2017.05.18 ニュース
眞子内親王殿下の御婚約が発表されました。
めでたい限りです。お相手は、民間人の小室圭さんとのこと。
眞子様は小室家に嫁入りし、皇籍を離脱なされます。惜しむ声も多いようです。
とくに、「ただでさえ皇族の数が少ないのに、これ以上、減らしてどうするのか」との声もあります。
また、陛下がご高齢で御公務が大変なのに、
代わって御公務ができる皇族が減るのは問題なのではないか」との声もあります。
ごもっとも。
そこで、内親王がご結婚の際に皇籍を離脱しなければならない現行の皇室典範を改正し、
女性宮家を創設すべきではないかとの意見もあります。
これに関しては、結論はそんなに難しくないので、簡単に答えておきましょう。

 問一 女性宮家創設は是か非か。
 答一 是、です。絶対ダメではない程度の、消極的な是ですが。

先例があるので構いません。
江戸時代に桂宮を継承した淑子内親王(仁孝天皇の第三皇女)の一例だけではありますが。
ちなみに淑子内親王はお子さんを残さず薨去されたので、桂宮家は断絶しました。
これは佳例とは言えませんので、女性宮家は何が何でもやる話ではありません。
どうしても必要ならば、絶対にダメとは言わない、程度の話です。

 問二 その場合、小室さんの御身分は?
 答二 准皇族が適切です。

今はありませんが、昔は准三后という身分がありました。
皇后・皇太后・太皇太后の三后に准じるという意味です。
有名なところでは、人臣最初の摂政の藤原良房、『神皇正統記』の著者の北畠親房、
室町幕府最後の将軍の足利義昭などが准三后でした。
というふうに、民間人が准皇族となった先例はいくらもあります。
だから、小室さんが准皇族となっても問題はありません。
ただし、「准」であって、皇族にはなれません。
皇族ではない単なる民間人が、皇族となった例は、歴史上一度もありません。
皇室では許されないことです。「准」の一文字が付くのと付かないのでは、天地の違いなのです。
なお、インターネットで検索すると「準皇族」の文字ばかりが並びますが、誤字です。
野田佳彦内閣で女性宮家が議論されたとき、誤字が報道された影響でしょう。
 
問三 小室さんが准皇族となられた場合、小室さんの敬称は?
 答三 殿下です。

女性宮の配偶者なのですから、「殿下」です。
江戸時代の先例では、桂宮淑子内親王の婚約者は皇族の方でしたから、当然、敬称は「殿下」でした。
では民間人出身の小室さんは? 殿下で構いません。
皇室の先例では、民間人を殿下と呼んで構いません。日本人なら誰でも知っている有名人の先例があります。
単なる農民の子供の出身から殿下に成りあがった人物がいます。
ここまで言えばわかるでしょう。豊臣秀吉です。
晩年の秀吉は「太閤殿下」と呼ばれました。太閤とは元関白の意味です。
天皇の代理人である摂政や関白の登った人は、殿下と呼ばれるならわしなのです。
だから、内親王の配偶者の方を殿下とお呼びしても何の差支えもありません。
 
 問四 女性宮家を創設された場合、眞子様と小室さんの間に生まれたお子さんの身分は?
 答四 民間人です。皇族にはなれません。

ここまで「先例」という言葉を繰り返してきました。
皇室の歴史は、『古事記』『日本書紀』の神話にさかのぼります。
初代天皇神武天皇の伝説にさかのぼれば、皇室は公称二千六百年の歴史を誇ります。
なぜそれほど皇室は続いてきたのか。神話や伝説の時代から変わらぬ伝統を保持してきたからです。
だから皇室では、先例が吉、新儀は不吉なのです。
なぜ? と言われても、そういう世界だからとしか言いようがありません。
そのもっとも重要な伝統は、歴代天皇はすべて父親をたどれば天皇に行きつきます。
父親が天皇でなければ、その父親、さらに父親とたどりつけば必ず歴代天皇の誰かにたどりつく。
これを男系と言いますが、歴代天皇はすべて男系です。
天皇になる資格がある人を皇族と言いますが、二千六百年間、皇族全員が男系です。
女性の皇族も、全員が男系です。つまり父親が天皇・皇族です。
しかし、民間人と結婚された女性皇族が、その子供を皇族にした例は一度もありません。
仮にですが、眞子様が女性宮家を創設され、小室さんとの間にお子様が生まれても、
そのお子さんは皇族になれません。
皇室の歴史では一度も許されてこなかったからです。絶対にやってはいけない新儀です。
御公務軽減のために女性宮家創設という意見ならば、
「どうしてもやりたいなら」という消極的賛成はしても構いません。
しかし、「女性宮家を創設して皇族を増やそう」というならば許されません。
皇族が減っていくままの今、皇位の安定継承は急務です。
しかし、女性宮家の話は何の関係もありません。
ちなみに勘違いしていそうな人がこちら。

民進・蓮舫代表「国民の一人としてお喜び申し上げる」 
女性宮家の議論「期限切り結論出すべき」(産経ニュース2017.5.16より)
(以下引用)
蓮舫氏は、今後眞子さまが一般男性とのご結婚で皇籍を離脱する見通しを念頭に、
「私たちは(天皇陛下の譲位に関する)議論のとりまとめで、
女性宮家のあり方を早急に検討し、期限を切り結論を出すべきだと主張してきた」と述べた。
くれぐれもご用心あれ。
https://nikkan-spa.jp/1334170


「女性天皇」賛成派は愛子様に生涯独身で通していただくつもりか?
【憲政史家・倉山満】
2017.05.27 ニュース
女性天皇に68%が賛成! 反対は12%。5月24日の毎日新聞が報じている。
だから、どうした?
現在の皇室典範では女性天皇(女帝)は認められていない。
では女帝容認論者は、悠仁親王殿下の皇位継承を阻止し、愛子内親王殿下の御即位を目論んでいるのか。
毎日新聞が何を企んでいるのかよくわからないが、
悠仁親王殿下と愛子内親王殿下の対立を惹起したいのではないかと勘繰りたくなる。
平成17年にも似たようなアンケートが次々と繰り広げられ、
「愛子様が天皇になれなくてよいのか?」という女帝論、
「今の皇室典範では愛子様のお子様が天皇になれないのだぞ!」との女系論が、
多くのマスコミでヒステリックに絶叫されていた。
しかし、「女帝と女系の区別がついているのか」との一声に、その種のアンケートは尻すぼみになった。
最初に大事な結論を言っておく。皇室は一人の例外もなく、男系で継承されてきた。
その男系とは男女差別であるとの誤謬がまかり通っているが、
それを言うなら、むしろ男性排除の論理であると何人がわかっているのだろうか。
アナタは女帝に賛成ですか? と聞かれたら、
私は「絶対に反対とは言わないが、無理やり推進する話でもない」と答える。
皇室に関して迷った時の根本基準は一つ。先例だ。
そして、どの先例に従うべきかどうかを考えるために、吉例を探す。
確かに、女帝には先例がある。伝説の時代の神功皇后(神功天皇)は数えないので、
有史以来、十回ある。推古天皇、皇極天皇(斉明天皇)、持統天皇、元明天皇、元正天皇、
孝謙天皇(称徳天皇)、明正天皇、後桜町天皇である。
皇極天皇と孝謙天皇は重祚(ちょうそ)といって返り咲いて天皇に二度おつきになられたので、八方十代である。
女帝は飛鳥時代から奈良時代にかけて集中し、明正・後桜町の二代だけは江戸時代である。
さて、この八方には共通点がある。未亡人か、生涯独身である。
推古、皇極、持統、元明の四方は即位の際に未亡人であり、その後も再婚されなかった。
元正、孝謙、明正、後桜町の四方は、生涯独身を通された。
なぜか。女帝の配偶者に権力を握らせないためである。
推古天皇は、敏達天皇の未亡人である。聖徳太子と蘇我馬子との三人で、飛鳥時代を指導した。
崇峻天皇暗殺という動揺に際して、擁立された。
皇極天皇は、舒明天皇の未亡人である。中大兄皇子(天智天皇)の実母でもある。
大化の改新前後の動揺期に、二度も擁立された。
持統天皇は、天武天皇の未亡人である。壬申の乱に勝利した天武天皇の威厳は偉大だった。
それだけに後継をめぐる争いは激しく、天皇の候補者が多すぎたので擁立された。
元明天皇は、草壁皇子の未亡人である。草壁皇子は、天武天皇と持統天皇の実子である。
草壁皇子も、その子・文武天皇も早逝した。
しかし、草壁皇子の系統に皇位を継がせようとの執念が、元明天皇擁立をもたらした。
以上の四方五代の天皇は、激しすぎる古代の政争のゆえに、擁立された。
繰り返すが、全員が未亡人で再婚していない。
元正天皇の時代は、皇族どうしの結婚が普通であったが、それでも遠慮された。
配偶者の皇族が権力を持つのが警戒されたからだ。
称徳天皇は、愛人と噂された道鏡が皇位につこうとし、国を挙げての大騒動になった。
我が国の歴史において、明確に天皇になろうとの意思を示した民間人は、道鏡ただ一人である。
ここに、女帝は生涯独身か未亡人の不文法が確立した。そもそも、江戸時代まで850年間、女帝が絶える。
明正天皇は、父・後水尾天皇の政治的意思で即位させられた。
明正天皇の母は徳川和子、二代将軍・秀忠の娘である。
後水尾帝と秀忠は激しく対立し、帝は抗議の意味で明正天皇に譲位された。
それがなぜ、抗議になるのか。明正天皇は、皇室の先例(不文法)により、
生涯独身を余儀なくされるからである。
結果、秀忠の曾孫が天皇になることはできなくなる。
明正天皇は、わずか五歳で即位し、十九歳で譲位された。
その間、後水尾上皇の院政が敷かれ、女帝にはなんの実権もなかった。
そして最後は尼となり、七十四歳の生涯を閉じる。政治に翻弄された人生だった。
後桜町天皇は、宝暦事件などで緊迫していた、朝廷と幕府が絡んだ複雑な政治対立を緩和するためだけに擁立された。
そして後桃園天皇の若すぎる崩御も乗り切り、光格天皇を支え続けた。
なお、光格天皇は現在の皇室の直系の祖先である。
そして七十四歳まで静かに暮らされた。
後桜町院は、皇室と日本国の繁栄のために女の幸せを自ら捨て、その私心のない姿が国母として尊敬された。
ここで、問う。
「愛子様が天皇になってほしい」と願うのは勝手だ。では、どの先例を、吉例とするのか。
愛子内親王殿下にふさわしい先例とは、何ぞや。
過去の女帝は、八方とも苛酷な人生を歩まれたことを知ったうえでも、まだ言うのか!?
皇室の先例、不文法に従えば、愛子内親王殿下が御即位されるとあらば、生涯、独身を通さねばならない。
皇室は男系絶対であり、男性排除の論理で成立しているからである。
仮に愛子内親王殿下が民間人の男性とご結婚されたとしよう。
その民間人が皇族、そして天皇になれば道鏡そのものである。
我が国の歴史で一度も存在しなかった事態である。
またその民間人の男性との間に生まれた子供が皇族、そして天皇になっても未曽有の事態である。
そんなものが許されるなら、
「天皇に娘を嫁がせて、その子供を天皇にする」などというメンドクサイ摂関政治は不要だった。
徳川秀忠だって同じことをしようとしたが、皇室の不文法の前に敗れた。
男系絶対とは、皇室の血をひかない民間人を排除する原理なのである。
ちなみに女性は必ずしも排除されない。
今の皇后陛下は正田、皇太子妃殿下は小和田の苗字の民間人だったが、いまでは皇族となられている。
古くは、藤原光明子が光明皇后となられた先例に遡る。だから、女性差別どころか、男性排除なのである。
女系は先例がないので、論外である。絶対に不可である。
女帝は先例があるので、「絶対に反対とは言わないが、無理やり推進する話でもない」と答える。
愛子内親王殿下は過去八方と同じく、男系女子であり、資格はある。
現在の典範が女帝を禁止しているなら、典範そのものを改正すればよい。
明治につくられたたかが百数十年の歴史しかない典範よりも、
皇室の不文法である古代よりの先例が優先するのは当たり前だ。
では、生涯独身で通していただくのか。
実は、一つだけ方法がある。皇族の男性と結婚されることである。
現時点では悠仁親王殿下だけが有資格者である。
いとこ婚は生物学的には問題ないが、無理やり推進する話でもあるまい。
あるいはダグラス・マッカーサーに無理やり皇族の資格をはく奪された
旧宮家の子孫である旧皇族の方々から適切な方を探し出してくるか。
皇族のご結婚は国家の大事なので、非礼不敬を承知で申し上げた。
しかし、「女帝に賛成か反対か」と問うならば、これは絶対に避けて通れない問題である。
何よりも大事なのは、現在の皇統は、幼き悠仁親王殿下お一人にかかっているのだ。
何よりも肝要なのは、殿下が御即位される際に、帝を支える男性の皇族がどれほどおられるかであろう。
女帝に賛成か反対かなどと、お遊びに興じている暇はない。
【倉山満氏】
https://nikkan-spa.jp/1338263

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