倉山満が「5つの誤解」を解く

あなたの天皇観はまちがっている!? 倉山満が「5つの誤解」を解く
2017.06.14

新刊『日本一やさしい天皇の講座』にて、皇室と日本人の関係を通史で書き上げた倉山満氏。
譲位、女系、女帝、旧皇族の皇籍復帰など、皇室を巡る論点は尽きないが、
氏に言わせれば「その前提となる部分に、国民のカン違いが多い」という。
皇室に対する「よくある誤解」として、以下の5つを挙げてもらった。

【誤解1】天皇陛下が退位を希望するのは、公務に「疲れた」から!?

倉山満(以下、倉山):とんでもない誤解です。
平成28年8月8日のいわゆる「生前退位に関するビデオメッセージ」において、
天皇陛下はひと言も「俺は疲れた、休みたい」などとは仰っていません。
自分は死ぬほど働けと言われたら働くが、制度としてこの状態はどうなのか、
今後もずっと続けられるかどうかを考えてほしい、と訴えられたのです。

──「続けられる」というのは、何をですか?

倉山:伝統としての象徴天皇を、です。
日本国憲法に「天皇は、日本国の象徴であり……」と記されているせいで、
誤ったイメージが広まっているのかもしれませんが、
じつは歴代天皇のなかで「象徴ではなかった」天皇というのは、数えるほどしかいません。
平安時代の嵯峨天皇以降で考えれば、基本的にすべて象徴天皇です。
実力を伴う独裁者の地位を目指したのは、鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇ただひとり。
明治天皇も昭和天皇も、そんなことは微塵も考えていなかった。これが第2の誤解につながります。

【誤解2】戦後、マッカーサーが天皇の権力を剥奪した!?

倉山:象徴天皇というのは、別に進駐軍から押し付けられたものではありません。
日本はもともと象徴天皇でしたし、明治以降もそうでした。
にもかかわらず、マッカーサーが勝手に思い違いをして、「独裁者はやめろ!」と言ってきたわけです。

──話が噛み合っていなかったと?

倉山:そうです。初めからマヌケなやりとりなんですよ。
しかも厄介なことに、ここへもうひとつの誤解が重なってくる……。

【誤解3】日本憲法下では、天皇は自分の意見を表明してはいけない!?

倉山:繰り返しますが、マッカーサーは天皇に「独裁者はやめろ!」と言ってきました。
「判を押すだけのロボットになれ!」とは言っていません。
日本国憲法の表現を使うなら、天皇は「国政に関する権能を有しない」としただけです。

──「権能」とは?

倉山:一般的な言葉に置き換えるなら、「権限」でしょう。
英語にすれば、どちらも「power of command」で同じ意味です。
日本憲法下では、天皇は国政に関する権限こそ持ちませんが、
自分の意見を表明することや、結果として影響力を行使することまでは禁じられていません。
つまり戦後、日本人の多くは天皇に対して【誤解2】と【誤解3】という二重の誤解をしながら、
マッカーサーすら口にしなかった暴挙を行ってきたということです。

【誤解4】女系を認めない皇室典範は「男尊女卑」だ!?

倉山:これはむしろ逆だろう、と私は考えています。
詳しくは以前の記事「『女性天皇』賛成派は愛子様に生涯独身で通していただくつもりか?」を
読んでもらいたいと思いますが、
男系でつながる皇室はむしろ「男性排除」の論理で成り立っています。
女性は民間人でも皇族の方と結婚すれば皇室に入れますが、男性はそうはいきません。
男性が民間人の場合、皇族の方と結婚されても民間人のままです。

──結婚相手の女性皇族のほうが、皇籍を離れることになりますね。

倉山:そうです。美智子様や皇后陛下、雅子様が皇太子妃になられても、
眞子様と結婚される予定の小室圭さんが皇室に入ることはない。
ゆえに「男性排除」の論理だと言っているわけです。

──なるほど。

倉山:愛子様の女帝に関する議論についても、誤解があると思います。
我が国では、奈良時代に民間人の道鏡が皇位を狙って以来、
「女帝は生涯独身か未亡人のみ」とする不文法が確立しました。
女帝を認めていない現在の皇室典範を「男尊女卑」だと叫ぶのは勝手ですが、
もし愛子様が御即位された場合、「生涯独身」を求められるという歴史があることを
きちんと理解しているのでしょうか。甚だ疑問です。

【誤解5】「上皇」という尊号は「元天皇」だけに与えられるもの!?

倉山:特例法の成立により、天皇陛下は退位後、200年ぶりの「上皇」となることが決まりました。
この「上皇」という尊号は、天皇を辞めた方に贈られる「太上天皇」の略ですが、
歴史上には天皇にならなくても「上皇」になった方が存在します。
その方々を「不登極帝(ふとうぎょくてい)」と呼びます。

──聞き慣れない呼び名ですね。

倉山:鎌倉時代の後高倉上皇や、室町時代の後崇光上皇などが「不登極帝」です。
死後に追贈された、陽光上皇と慶光上皇もいらっしゃいます。いずれも天皇の父君です。
天皇にはなっていないので、歴代天皇にはもちろん数えません。


 日本人なら誰もがその存在を知りながら、よく理解できていない事柄も多い皇室関係。
「じゃあ、よく理解できるようにしましょう」(倉山氏・談)との気持ちから生まれた
『日本一やさしい天皇の講座』は、全国書店ほかで絶賛発売中だ。

【倉山満】
1973年、香川県生まれ。憲政史研究者。
著者シリーズ累計35万部を突破したベストセラー『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』
『嘘だらけの日韓近現代史』『嘘だらけの日露近現代史』『嘘だらけの日英近現代史』
『嘘だらけの日仏近現代史』のほか、保守入門シリーズ『保守の心得』『帝国憲法の真実』など。
2017年6月、待望の新刊『日本一やさしい天皇の講座』を上梓

<取材・文/ツクイヨシヒサ>

https://nikkan-spa.jp/1345846